因数分解について、論理編・公式編と2回に分けて説明をしてきました。
今回はそれに続くテクニック編で、ようやく本題に入れたと言っても過言ではありません。
今回は、基礎的なテクニックを改めて確認します。
実は次回で、たすきがけというテクニックを確認します。
いわゆる難しい問題・ひらめかなければいけない問題は、このたすきがけを行うことで八割方解けます。それくらい強力なテクニックなのですが、今回の基礎的なテクニック、特に後半の次数で整理するあたりを理解していないとなかなかうまく使えないテクニックでもあります。
ですから今回の内容は(今回も、ですが)ばっちり頭に入れてくださいね!
今回のポイントはこちらです。
- 同じモノは、置き換えて楽をせよ!符号反転に注意!!
- 困ったら、次数の一番低い文字で整理!!
基本的なテクニック
共通因数でくくる
何をおいても、まずは共通因数を探しましょう。
前回・前々回も強調しましたが何回でも言います。共通因数は大事です。
同じモノは置き換える
例を見た方が早いと思います:
\begin{aligned} (x+y)^2+2(x+y)+1&=X^2+2X+1\ \ \ (x+y=Xと置いた)\\ &=(X+1)^2\\ &=(x+y+1)^2 \end{aligned}
このように、同じかたまりを見つけたらいったん他の文字で置き換えるというのは頻出のテクニックです。こうすることで、計算がしやすくなります。問題集とかでも見たことありますよね。
ただこのパターン、気を付けてほしい場合が1つあります。それは、「一見同じかたまりは無いけれど、マイナス括弧で一部をくくると、同じかたまりが見える場合」です。
展開するときを考えた方が見えやすいでしょうから、ここでは以下の例を載せましょう:
\begin{aligned} (x-y+z)(x+y-z)&=\{x-(y-z)\}\{x+(y-z)\}\\ &=(x-X)(x+X)\ \ (ただしy-z=Xと置いた)\\ &=x^2-X^2\\ &=x^2-(y-z)^2\\ &=x^2-(y^2-2yz+z^2)\\ &=x^2-y^2+2yz-z^2 \end{aligned}
一行目で、うまくマイナス括弧でくくるとy-zがきれいに出てきますね。
マイナス括弧でくくる、つまり符号を反転させると同じモノになるパターンには注意してください。
ここはポイントとしてポイントノートに載せることとしましょう。
- 同じモノは、置き換えて楽をせよ!符号反転に注意!
1つの項を2つに分ける
これは正直あんまり使わないし、これを使わなくても解けることは多いです。
ただ別解として登場することも結構あるので取り上げておきますね。
\begin{aligned} x^2y^2+1-x^2-y^2-4xy&=x^2y^2+1-x^2-y^2-2xy-2xy\\ &=(x^2y^2-2xy+1)-(x^2+2xy+y^2)\\ &=(xy-1)^2-(x+y)^2\\ &=\{(xy-1)+(x+y)\}\{(xy-1)-(x+y)\}\\ &=(xy+x+y-1)(xy-x-y-1) \end{aligned}
はじめに-4xy=-2xy-2xyと分解していますね。こうすることで2つの公式が使える形になって…という流れなのですが、いやこんなの思いつきませんね。
ですが次回で紹介するたすきがけを使えば、こんな問題も解ける気がしてくると思います。
たすきがけのところを読んだ後に、またこの例を見てみてください。
ちなみにさらに発展として、0=A-Aのように、0から項を生み出すこともできます。ただこれは結構難しい上にほとんど出ないので、あまり心配しなくても良いです。というか下手に考慮して泥沼にはまらないように(笑)。
何も思いつかなくて困ったとき…
因数分解の問題を解いていて、「まず何すれば良いんだろ…」となるときってありますよね。
ぱっと見公式も使えない、置き換えもできない…そんなとき、まずおすすめしていることがあります。
それは、次数の一番低い文字で(複数ある場合は適当に一つ選んで)整理することです。
文字の次数
次数というのは、「式の中の各項それぞれにかかっている文字の数のうち、最大の数」のことですね。
例えば、x^2やxyなら2、5x^2y^2+zなら4、10+3x^2+xyzなら3といった感じです。
では、文字の次数とは何のことかというと、「次数のうち、それぞれの文字だけに注目して次数を数えたときの次数」という感じです。分かりづらいので例をあげると:
- x^2+1なら、xの次数は2
- 3xy^2なら、xの次数は1、yの次数は2
- xy^2+2x^3なら、xの次数は3、yの次数は2
- 4xyz+x^2+y^2+z+3なら、xの次数は2、yの次数は2、zの次数は1
といった感じです。文字ごとに数える、というのがポイントですね。
整理する
○○について整理するというのは、「○○の次数が同じ項ごとにまとめて、さらに、次数の高い順に並べること」だと考えてください。
例1)
x^3+4+x^2y+3x^2+x^4をxについて整理すると、\\ x^4+x^3+(3+y)x^2+4
例2)
xyz+2x^2+2y^2+xz+10zをzについて整理すると、\\ (xy+x+10)z+2x^2+2y^2
考え方としては、指定された文字以外の文字を、数と同じように考えてしまうのが良いでしょう。
実際の問題で
では、実際の問題で「次数の一番低い文字で(複数ある場合は適当に一つ選んで)整理する」とどうなるのか見ていきましょう。
\begin{aligned} x^2+xy-y-2x+1を因数分解せよ \end{aligned}
という問題があったとして、ぱっと見共通因数も無い、公式に当てはまるところも置き換えられるところも無いので、どうしよう…ってなります。
そこで今回の話を思い出して、次数の一番低い文字で整理しましょう。
この問題ではxの次数が2、yの次数が1なので、yで整理するとこうなります。
x^2+xy-y-2x+1=(x-1)y+x^2-2x+1
そうすると、あれ?後ろの方で公式が使えそうですね。
さらに共通因数でくくれそうな感じもしてきて…
\begin{aligned} x^2+xy-y-2x+1&=(x-1)y+x^2-2x+1\\ &=(x-1)y+(x-1)^2\\ &=(x-1)\{y+(x-1)\}\\ &=(x-1)(x+y-1) \end{aligned}
これで因数分解ができました。
何をしたらいいか分からない!というときは、並べ替えて初めて何をすれば良いか分かるパターンの問題のときが多いです。
これはまとめてポイントとしておきます。
- 困ったら、次数の一番低い文字で整理!!
今回の宿題
- 中学3年の単元「因数分解」から計算問題15問以上
を、今回の説明を意識して解いてみてください。
学校で配られた問題集でも、ネット上の問題でも大丈夫です。