第1-9回 n元m次方程式と不定方程式

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前回の記事で、必要に応じて式を「立てる」ということを学びました。
今回と次回は、実際に式を「解く」ことに焦点をあてて学んでいきましょう。

中学で学ぶ基本的な方程式を一貫性をもってまとめ直すことを目標にしたいと思うので、解き方と共に理解もばっちり深めていってくださいね。

中学で学ぶ方程式は、大きく2つに分けられます。解が1つの値に定まるものと、そうでないものです。その違いは何か、それぞれどう解くのか?を、この記事を通してぜひ学んでください。

  • n元方程式は、未知数の数を減らして簡単な形にせよ!
  • 不定方程式は、変数を活用!

n元m次方程式

n元m次方程式とは、簡単に言えば「未知数がn個で、方程式の次数がmのもの」です。
nとmにはそれぞれ1,2,3などの自然数が入ります。

  • x+3=0は1元1次方程式
  • 3a+b=4は2元1次方程式
  • x^2+y^2+1=0は2元2次方程式
  • xy+9x+10z=0は3元2次方程式
  • a^3+3a^2+bc+4は3元3次方程式

のような感じです。
次数を数えるとき、1つの文字に注目するのではなく未知数全てで数えることに気を付けてください。(例の4つ目などは、xyがあるから2次なのですね。)

さて、ここまで来れば今まで中学で習ってきた方程式たちが、詳しくはどういう名前なのかが分かるでしょう。

  • いわゆる一次方程式は、1元1次方程式のこと
  • いわゆる連立方程式は、2元1次方程式を2つ合わせたもの
  • いわゆる二次方程式は、1元2次方程式のこと

と、ここまで書きましたが、まぁ要するに呼び方の問題です。別にこれまで通りの呼び方が間違っているというわけではありません。

ではなぜn元m次方程式という呼び方を今回教えるのか?

その理由の1つは、こうすることでそれぞれの方程式の単元(中学1年の「方程式」や、中学3年の「二次方程式」など)が、実際はn元m次方程式というものの具体例(nとmに具体的な数字を当てはめたもの)であるという見方を持ってもらうためです。こうすることで、バラバラに習ったものを1つのかたまりとして感じることができると思います。

そしてもう1つの理由は、方程式を解く際に「n元m方程式」のnが特に大事だからです。なぜかと言えば…そう、「未知数の和だけ式を立てろ!」の、未知数の数がまさにn元のnのことだからです。

というわけで以下では、特にnが具体的にどんな数字をとるか?ということを考えて、方程式を解く際の取り組み方を教えていきましょう。

1元のとき

1元のとき、必要な式は1つだけです。

1元1次の場合は特に言うことは無いでしょう。簡単ですからね。

1元2次のとき…このときは、強いて言うなら「因数分解できないかな…って長時間悩むくらいなら、とっとと解の公式を使え!」というところです。因数分解してから解くやり方ももちろん大事なんですけど、少しでも時間かかりそうだな、と思ったら解の公式を使ってしまうのが実戦上は良いでしょう。

1元2次方程式については、次の次の回でもう少し詳しく扱います。

2元以上のとき

2元以上のとき、というのが厄介であり、また今回の記事の本題でもあります。

まず第一に、n元方程式を解くためには、その式自身を含めてn個以上の、同じ未知数を含んだ方程式が必要です
nより少ない数しか式が立っていないとき、それは不定方程式といって解けません(次の見出しで扱います)

ここではとりあえず、n元方程式について同じ未知数を含んだ方程式がn個連立できているとしましょう。
このとき、以下がポイントとなります。

  • n元方程式は、未知数の数を減らして簡単な形にせよ!

簡単な形というのは、学校で習った方程式の形、つまりいわゆる一次方程式、二次方程式、連立方程式のことです。

余談

数学では、一般的に「難しい問題は、色々いじって知っている形にする」というやり方がよく行われます。知っている形というのはつまり比較的シンプルな、簡単な形ってことです。「一見難しそうだけど、実は知っているものを組み合わせただけでした~」という話ですね。

今回も同じことで、n元m次方程式という難しいものを、解き方の分かる一次方程式とかに変えています。こんな風に考えるとき、これを受験業界の言葉で(数学用語でもあるのかな?)「~の問題に帰着させる」とか言います。~には知っている形の名前が入ります。今回だったら、「一次方程式に帰着させて解く」みたいな言い回しになりますね。

まあ分かりづらいと思うので、ここで例を出しておきましょう。

例1
\left\{
\begin{aligned}
x+y+z+1=0\\
x+2y+3z=0\\
2x+y+z=1
\end{aligned}
\right.

未知数3つに式3つなので、これは解くことができます。

例えば、1式目をx=-y-z-1の形にして、それを2式目と3式目に代入すれば、いわゆる連立方程式に帰着しますから解けるはずです。

例2
\left\{
\begin{aligned}
x+y+z+1=0\\
x^2+x+3y=0\\
z=1
\end{aligned}
\right.

という式があったとしましょう。
3元1次方程式と、2元2次方程式と、1元1次方程式の組み合わせです。

全体として未知数3つについて式が3つ立っているので、これは解くことができます。
全体としての未知数の数と、式の数が一致していれば良いので、個々の式が何元何次だろうと問題ないです。全部の式が、全部同じ元の数・次数じゃなきゃいけないわけではありません)

まあzについてはもう解けているのも同然なので、z=1を他の2式に代入して未知数の数を減らし、整理しましょう:

\left\{
\begin{aligned}
x+y+2=0\\
x^2+x+3y=0\\
\end{aligned}
\right.

これでzが消えて、未知数は2つになりました。

さてここからどうするか?2式目が1次方程式なら、いわゆる連立方程式になっていたので解けたのですが…そうはいかないみたいです。

というわけで、またポイント通り代入法で未知数を減らしましょう。代入法を使って、1式目をy=の形にして、2式目に代入するのが良さそうです:

\begin{aligned}
&x^2+x+3(-x-2)=0\\
よって\\
&x^2-2x-6=0\\
解の公式より\\
&x=1\pm\sqrt{7}\\
\end{aligned}

代入して未知数を減らすことで、二次方程式に帰着させることができました。

あとはこれを他の式に代入すれば:

\left\{
\begin{aligned}
x&=1\pm\sqrt{7}\\
y&=-3\mp\sqrt{7}\\
z&=1
\end{aligned}
\right.

となります。

基本的には、例のように代入法で未知数の数をガンガン減らしていくのがセオリーです。
細かいテクニックを使って楽をするパターンというのもまぁもちろんあるのですが、この方針に従っておけば(多少計算が増えたとしても)問題なく解けます。

論理
  1. 未知数の数だけ式を立てて、
  2. 原則代入法で未知数を減らし、知っている形に帰着させる。

という考え方をしっかり身につけてください!

不定方程式

さて、前の見出しではn個の未知数に対してn個の式が立っているときを扱いました。

ここでは式が足りないとき(未知数3つに対して式2つなど)を考えます。
こういう、未知数に対して式の数が足りていない式を、まとめて不定方程式と言うわけですが…なんで「不定」なのかは分かりますね。式の数が足りないため、解が1つの値に「定まらない(不定)」からです。

そんな不定方程式の(1つに定まらない)解ですが、1つの値に定まらないだけで、実はとある形で表すことができます。結論から先に言いましょう:

n個の未知数に対してr個の式が立っているとき、その解は(n-r)個の変数を含んだ形で表される。

未知数が変数を使って表されるという、ちょっとややこしい感じになっています(笑)。
未知数と変数の違いは前回扱いましたね。つまり、不定方程式の解は、不定方程式を満たす値の集まりとして表されるわけです。

案の定分かりづらいと思うので、例を挙げましょう

例1
\left\{
\begin{aligned}
x+2y+3z&=10\\
y+5z&=3
\end{aligned}
\right.

という式があったとします。未知数3つに対して式2つなので、これは不定方程式です。

この問題では、(3-2=)1個式が足りませんね。
よって、ここが不定方程式のポイントなのですが、未知数を1つ選んで変数に置き換えるということをします。

今回はkという変数を自分で勝手に設定します。(ここは別にsでもtでも、紛らわしくないなら何でも構いません。)
未知数も何でも良いのですが、ここではzkに置き換えましょう。つまりz=kですね。

大事なことは、未知数ではなく変数というふうに意味を変えることです。
未知数と変数の違いが分かっていないとこの辺厳しいので、前回の復習をしてください。

変数は単なる数の代表なので、ここでは普通の数と同じように扱います。
すると:

\begin{aligned}
&\left\{
\begin{aligned}
x+2y&=10-3k\\
y&=3-5k
\end{aligned}
\right.\\
整理して&z=kを付け加えると、\\
&\left\{
\begin{aligned}
x&=7k+4\\
y&=3-5k\\
z&=k
\end{aligned}
\right.
\end{aligned}

となります。

これが不定方程式の答えです。kが答えに入ってきているのが気持ち悪いですか?(笑)

ではkがきちんと変数として機能していることを確かめてみましょう。
例えばk=1と代入します。すると:

\left\{
\begin{aligned}
x&=11\\
y&=-2\\
z&=1
\end{aligned}
\right.

となりますが、これは実際に最初の式を満たします:

\left\{
\begin{aligned}
11+2\times(-2)+3\times1&=10\\
-2+5\times1&=3
\end{aligned}
\right.

kの値が変わっても成り立つことを確認してみてください。

上の例では1つしか変数に置き換えていませんが、場合によっては2つでも3つでも構いません

例2

ある意味、

x+y+z=1

みたいな極端な例でも(実際にこんな問題は出ないと思いますが)不定方程式としてなら解くことができます。

未知数3つに対して式1つなので、(3-1=)2個式が足りません。

よってstを変数として、y=s, z=tと置き換えましょう。すると答えは:

\left\{
\begin{aligned}
x&=1-s-t\\
y&=s\\
z&=t
\end{aligned}
\right.

と表せます。

以上が不定方程式の基本的な考え方です。ポイントはこんな感じでしょう。

不定方程式は、変数を活用!

今回の宿題

  1. 中学1年の単元「一次方程式」から計算問題10問以上
  2. 中学2年の単元「連立方程式」から計算問題10問以上
  3. 中学3年の単元「二次方程式」から計算問題10問以上

を、今回の説明を意識して解いてみてください。
学校で配られた問題集でも、ネット上の問題でも大丈夫です。

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