第1-10回 連立方程式を掘り下げる

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前回前々回と、未知数や式が複数ある場合を扱いました。
ここで気づいた人も多いと思うのですが、(広い意味での)連立方程式は実用上かなり大事な位置をしめているのですね。

というわけで、今回は連立方程式の解法について少し掘り下げていくこととしましょう。
代入法・加減法だけではなかなか解きづらい問題も世の中にはありますから、今回の記事を通して、そんな問題にも対応できる力を付けてください。

いちいち「広い意味での」とか書くのも面倒ですから、「いわゆる連立方程式」に限らず、式が複数集まってひとかたまりになっているものは今回以降全部「連立方程式」と呼ぶことにします。誤解の無いように気を付けてくださいね。まぁ普通に読み進めていれば勘違いすることは無いと思います。

今回のポイントはこちら。

  • 連立方程式は、加減法で簡単にして代入法でフィニッシュ!
  • 分母に文字のある連立方程式は、まるごと置き換え!

加減法を活用せよ

まず手始めに、連立方程式を解くときに使える、一般的なテクニックを教えましょう。

例1
\left\{
\begin{aligned}
x+y+z+1=0\\
x+2y+3z=0\\
2x+y+z=1
\end{aligned}
\right.

前回、こんな問題を例として出しました。

その時の解説では、代入法だけで解きましたが…これ、部分的に加減法を使っても良いのです。
式が3つ以上になろうと、次数が高くなろうと、「ある式を数倍して、他の式に足したり引いたりする」という加減法の操作は可能です。可能とはつまり、3式目から1式目を両辺同士引いて:

\left\{
\begin{aligned}
x+y+z+1=0\\
x+2y+3z=0\\
x-1=1
\end{aligned}
\right.

と変形した、こんな形の連立方程式を解いても答えは同じものが出てくるということです。

さらに2式目から1式目を2倍したものを引いて:

\left\{
\begin{aligned}
x+y+z+1=0\\
-x+z-2=0\\
x=2
\end{aligned}
\right.

と変形した、こんな連立方程式を解いても同じ答えが出てきます

当たり前だな、と思ってもらえればそれで結構です。

ただ何が言いたいかというと、加減法をうまく使えば、もともと解こうとしていた式をより簡単な形にしてから解くことができるということです。もうひとつ例を出しましょう。こちらの例の方を見れば、何が言いたいのか伝わると思います。

例2
\left\{
\begin{aligned}
11x^2+7x+9y&=27\\
2x^2+2y+2z&=10\\
x+y+z&=5
\end{aligned}
\right.

これ、簡単な形にせずに代入法でやろうとし始めたら計算だるそうですね…。

とりあえず、2式目から3式目を2倍したものを引いてみましょう:

\left\{
\begin{aligned}
11x^2+7x+9y&=27\\
2x^2-2x&=0\\
x+y+z&=5
\end{aligned}
\right.\\
2式目の両辺を2で割って、
\left\{
\begin{aligned}
11x^2+7x+9y&=27\\
x^2-x&=0\\
x+y+z&=5
\end{aligned}
\right.

ふむ、多少きれいになりました。ここでもうxの値を出しに行っても良いですが、後で1式目に代入するのがだるそうなので(xの値って2つ出てきますしね)、1式目から2式目を11倍したものを先に引いておきましょう:

\left\{
\begin{aligned}
18x+9y&=27\\
x^2-x&=0\\
x+y+z&=5
\end{aligned}
\right.\\
1式目の両辺を9で割って、
\left\{
\begin{aligned}
2x+y&=3\\
x^2-x&=0\\
x+y+z&=5
\end{aligned}
\right.

ずいぶんすっきりしましたねえ。もう十分な気もしますが、せっかくの例題なのでもうちょっとだけいじりますか。3式目から1式目を引いて:

\left\{
\begin{aligned}
2x+y&=3\\
x^2-x&=0\\
-x+z&=2
\end{aligned}
\right.

はい、もう最初の複雑さが跡形も無く消え去りました

というわけで、ここまで来たら2式目からxの値を出すと、x=0,1と出てくるので、それぞれ1式目と3式目に代入してy,zの値を出すと答えは:

\left\{
\begin{aligned}
x&=0\\
y&=3\\
z&=2
\end{aligned}
\right.
 または 
\left\{
\begin{aligned}
x&=1\\
y&=1\\
z&=3
\end{aligned}
\right.

となります。

ここまで読めば、計算を楽にするテクニックとしての加減法が理解できたはずです。加減法で簡単にして、代入法でフィニッシュ。これが大抵の連立方程式の王道解法です。複雑な形の式があったら、とりあえず簡単な形にできないか?と少し考えるようになってくださいね。

  • 連立方程式は、加減法で簡単にして代入法でフィニッシュ!

置き換えないと解けないパターン

置き換えというのは、数学でよくやるテクニックです。因数分解のところとかでも出てきましたね。
ここでは、特に覚えておくべきかなという置き換えパターンを2つ紹介しておきます。

複二次方程式

複二次方程式とは何か?というと、例えば:

(x^2-2x)^2-7(x^2-2x)-8=0

のような形の二次方程式です。
二次方程式の中に二次式が入っている、つまり複数の二次式の入れ子構造になっているから複二次方程式と呼んだりします。

これ、このまま展開したら四次方程式になって悲惨なことになりますね。

というわけで同じ形のところを置き換えます。今回はx^2-2x=Xと置き換えることにすると、X^2-7X-8=0となり、つまりX=-1,8と分かります。

あとは置き換えたものを元に戻して、もう一度二次方程式を解きましょう:

\begin{aligned}
X=-1,&8より、\\
&x^2-2x+1=0 または x^2-2x-8=0\\
これを解&くと\\
&x=1,-2,4
\end{aligned}

が答えです。

今回は連立していないものを例としてあげましたが、連立方程式の中でもこの手の置き換えが必要となることもあるので紹介しました。

分母に文字がある分数式

分母に文字がある分数式は、置き換えが必要なことがほとんどであり、知らないと全く太刀打ちできません。2つほど例をあげるので、どうすればいいのかここで覚えてしまってください。

例1
\left\{
\begin{aligned}
\frac{1}{x}+\frac{2}{y}&=4\\
\frac{3}{x}+\frac{1}{y}&=7
\end{aligned}
\right.

という連立方程式があったとします。
どうやって解くのか思いつきますか?

賢い子なら、「両辺にxyかければうまくいくかも?」と思うかもしれません。では実際に両辺にxyをかけてみましょう:

\left\{
\begin{aligned}
y+2x&=4xy\\
3y+x&=7xy
\end{aligned}
\right.

うーん、いけるかと思いましたが、右辺のxyが邪魔でうまく解けませんね。(少なくとも左辺は知っている形に帰着しているので、xyをかけたい!と思うのは感覚としては間違っていないです。今回はうまくはまらなかっただけで。)

というわけで本題の置き換えを活用しましょう。どうするかというと、繰り返し出てくる分数をまるごと置き換えます。つまり:

\left\{
\begin{aligned}
\frac{1}{x}&=X\\
\frac{1}{y}&=Y
\end{aligned}
\right.

のような感じです。

こうすると、ただのX,Yについての連立方程式になり、X=2,Y=1となります。求めたいものはx,yだったので、逆数をとれば答えはx=\frac{1}{2}, y=1と分かります。

このような置き換えが基本的です。
次のような発展的なものもありますが、繰り返し出てくる分数を置き換えて解きやすくするという方針は同じですね。

例2
\left\{
\begin{aligned}
\frac{1}{2x+y}+\frac{2}{x+y}&=4\\
\frac{3}{2x+y}+\frac{1}{x+y}&=7
\end{aligned}
\right.

さて、例1と係数は同じですが、分母が複雑になっています。

多くの人は、ここで2x+yx+yを置き換えてしまって、どうしよう?ってなって解けなくなります。

ただこの記事を読んでいる皆さんは…もう分かりますね。分数をまるごと置き換えれば良いのです:

\left\{
\begin{aligned}
\frac{1}{2x+y}&=X\\
\frac{1}{x+y}&=Y
\end{aligned}
\right.

こう置き換えれば、X=2, Y=1と求められます。

今回は、置き換えたものを戻して逆数をとるだけでは答えは出ず、このような式になります:

\left\{
\begin{aligned}
2x+y&=\frac{1}{2}\\
x+y&=1
\end{aligned}
\right.

つまり、もう一回連立方程式を解けってことです。

これを解くとx=-\frac{1}{2}, y=\frac{1}{2}というふうに答えを出すことができます。

ここは重要ですので、ポイントにしておきましょう。

分母に文字のある連立方程式は、まるごと置き換え!

その他

さて最後は、多分知っているだろうけど知らなかったら困るなあというものを2つあげておしまいにします。

比例式の混ざっている場合

\left\{
\begin{aligned}
x:3&=y:2\\
x+y&=5
\end{aligned}
\right.

のように比例式が連立方程式に混ざっていても、びびらないでください。

比例式は「外側同士と内側同士をかけたものが等しい」んでしたね。(覚えていない人は教科書を開きましょう)。というわけで、上の連立方程式は:

\left\{
\begin{aligned}
2x&=3y\\
x+y&=5
\end{aligned}
\right.

と変形できて、答えはx=3,y=2となります。

A=B=Cの形の方程式

たとえば:

x+2y+4=2x+y+5=0

のような方程式を解くとき。

未知数2つだから式を2つ立てる、と考えれば難しくないですよね?
式1つにつき、等号1つあるのが普通です。上の式には等号が2つあるんだから、たとえば:

\left\{
\begin{aligned}
x+2y+4&=0\\
2x+y+5&=0
\end{aligned}
\right.

という風に書いても良いでしょう。

これを解くと、x=-2, y=-1が答えとなります。

今回の宿題

  1. 中学2年の単元「連立方程式」から計算問題15問以上

を、今回の説明を意識して解いてみてください。
学校で配られた問題集でも、ネット上の問題でも大丈夫です。

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