まず手始めに、直線の式を出すというところから始めましょう。
どんな受験問題でも、直線の式を出さないで済むことはありません。
ですから、直線の式の導出をうまく整理し、知識を身につけておくことは成績アップに必須です。
というわけで今回は、基本的ではありますが復習の意味も込めて直線の式まわりの知識を学んでいきましょう。
今回のポイントはこちら。
- 直線の式を出すときは、2点 or 1点と傾きを探せ!
- 平行は傾きが等しく、直交は傾きの積が-1。
- 二次関数と交わる直線の式は、x座標と二次関数の比例係数で表せる!
直線の式を出す!
関数の問題では、まず直線の式が出したいな、となることが多いです。
そんなとき、「何があれば直線の式が出せるのか?」を明確に意識することが大事でしょう。なぜなら直線の式を出すためのパーツさえ意識できていれば「じゃあまずそのパーツから集めよう」と思えるからですね。こちらのページでも紹介している、論理というやつです。
ではまず、直線の式が出せるシチュエーションをまとめましょう。
- その直線が通る2点が分かっている。
- その直線が通る1点と、直線の傾きが分かっている。
基本的には、この2パターンしかあり得ません。というか本質的なのは1つ目だけですね。
実用上2つ目を使うことも多いので、2つ目も載せてあるという感じです。
とりあえず、覚えやすくポイントにしておきましょう。
- 直線の式を出すときは、2点 or 1点と傾きを探せ!
1つ目のシチュエーションが本質的とはどういうことかというのを簡単に説明します。
まず、ただの”点”を考えてみてください。”点”の位置を定めるには…当然ですがまさにその”点”の位置を1つ定めることが必要です。
次に、”直線”を考えましょう。”直線”の位置を定めるには…2つの”点”を結んであげればいいですね。”点”が1つだと傾きが定まらないのでダメなわけです。
最後に、”平面”を考えましょう。”平面”を1つに定めるには…”直線”が2本あれば良いのが分かりますか?イメージとしては、扇を広げるとそこに扇の面が出てくる感じです。そして”直線”を2つ定めるためには、線同士の交点が1つあることに注意して、最低3つの”点”があれば良いのです。
さてここまでで勘のいい人はもう気づいたことでしょう。つまり、
- 平面(2次元)を1つ定めるには、点が3つ必要
- 直線(1次元)を1つ定めるには、点が2つ必要
- 点(0次元)を1つ定めるには、点が1つ必要
つまり、次元+1つの点があれば、欲しい”モノ”は1つに定まるというわけです。
では3次元である”空間”は…?と考えていくと、どこまででも考えられそうです。ただ注意しなければいけないのは、上に挙げたどの例も、1つ以上高い次元の中で考えているということです。つまり”空間”を考えようとすると、まず4次元を考えなければ…!?
さて話を戻して、シチュエーションごとにどう直線の式を求めるのかも整理していきましょう。
シチュエーション1
まず、直線の通る2つの点が分かっている場合の、直線の式の導き方です。
- 変化の割合を使って傾きを出す。
- その傾きと、1つの点の座標を定点公式に代入
いたってシンプルですね。シンプルですが、以外と忘れている2つの用語・定理が出てきたので復習しましょう。
(変化の割合)=\frac{(yの増加量)}{(xの増加量)}
であって、一次関数の場合に限り、
(変化の割合)=(直線の傾き)
である。
そもそもの定義をど忘れしがちなのできちんと覚えていてほしいというのと、それが傾き、つまりy=ax+bのaに一致するのは一次関数の時だけということは忘れないでください。二次関数y=ax^2のaには一致しないので気をつけてください。
直線の傾きがaで、点(p,q)を通るとき、直線の式は:
y=a(x-p)+q
と表される。
知らない人も割といる定点公式ですが、知っていると計算が速くなるので必ず覚えましょう。
この式は確かに傾きaで点(p,q)を通っていることを、代入で確かめてみてください。
今回基本ばかりで飽きちゃうと思うので、余談多めでいきます笑
定点公式がなんで成り立つんだろう…という話ですが、これは「座標変換」という話が裏にあります。
どういうことかと言うと、まず傾きaの直線のうち一番シンプルなY=aXを考えます。ここで、x,yではなくX,Yとしている理由はあとで分かります。つまり以下のようなXY座標上の直線なわけです。
さて、このXY座標の原点が、xy座標上の(p,q)と重なるようにxy座標を重ねてみましょう。
ここまで来ると、X=x-p, Y=y-qという関係が成り立っていることに気づくでしょう。(原点同士の関係を見てみてください)
よってこれをY=aXに代入すると、y-q=a(x-p)、つまりy=a(x-p)+qという式が導かれるわけです。
XY座標の上の直線を、xy座標上の直線として表し直す…つまり考えている座標を変えているから座標変換、というわけですね。まぁこの話が分からなくても式は使えるので、安心してください笑
シチュエーション2
次に、直線の傾きと、直線が通る1つの点が分かっている場合の導き方です。
- 傾きと、1つの点の座標を定点公式に代入
はいこれだけです。定点公式最強ですね。
ただこのシチュエーションでは直接傾きが与えられているというより、問題文からまず傾きを求めるという場合が多いですね。ですから、問題文の条件(多くは図形的性質)から、どうやって傾きの情報を手に入れるかをまとめておきます。
ふたつの直線が平行
y=ax+bとy=cx+dが平行の時:
a=c
が成立します。
ふたつの直線が平行ということは、ふたつは同じくらい傾いているということですから、意味を考えればこの式が成立するのも明らかでしょう。
ふたつの直線が垂直
y=ax+bとy=cx+dが垂直の時:
ac=-1
が成立します。
これ、地味に頻出なので忘れないでくださいね。
なんでこんなことが成り立つんだ!という人のために証明を載せます。興味ない人は飛ばしてもいいです笑
y=ax+bとy=cx+dが垂直の時、その交点をA、交点よりx座標が1大きい点をB、Bを通ってy軸と平行な線と、それぞれの直線の交点をそれぞれC,Dとします。
このとき:
\begin{aligned} &AB=1,\ BD=|a|,\ BC=|c|\\ &AB\perp CD\\ \end{aligned}
aとcに絶対値の記号がついてるのは、長さって正の数だからです。
これらのことから、三平方の定理の定理より:
AC=\sqrt{1^2+|c|^2}=\sqrt{1+c^2}\\ AD= \sqrt{1^2+|a|^2}=\sqrt{1+a^2\\}
よって、AC\perp ADより、△ACDに三平方の定理を使うと:
\begin{aligned} &AC^2+AD^2=CD^2\\ \therefore\ &(1+c^2)+(1+a^2)=(|a|+|c|)^2\\ \therefore\ &2=2|a||c|\\ \therefore\ &|ac|=1\\ \end{aligned}
割と端折りましたが式変形はこんな感じ。
ここでacの符号を考えると、必ずどちらかが正でどちらかは負です。(どちらか一方がy軸と平行だと傾きがないので、今回の場合はあり得ません。aとcという傾きがある場合を考えているので。)
つまり、ac<0です。|ac|=1であることと合わせて考えると:
ac=-1
だとわかるわけですね。
さて、上のふたつの話をポイントにします。
- 平行は傾きが等しく、直交は傾きの積が-1。
傾きがない
上の証明中で少し出てきましたが、y軸と平行な直線には傾きがない、というのも案外忘れがちなので思い出しておきましょう。使うことはあまりないですが、思わぬ穴になることもありますからね。
なぜ無いかを見るのに一番わかりやすいのは、この直線上の二点を選んで、変化の割合を考えてみることです。…そうすると、必ず分母が0になってしまいますね。
分母が0の数は定義されていないので、y軸に平行な直線も傾きが定義できない、というわけです。
二次関数と交わる直線の式
上のような基本的な直線の式の出し方に加え、二次関数に直線が交わっているときはより簡単に直線の式を出すことができます。
二次関数y=ax^2と一次関数y=cx+dが、x座標がpの点Pとqの点Qで交わっているとする。
このとき、以下の関係が成り立っている。
\left\{ \begin{aligned} c&=a(p+q)\\ d&=-apq \end{aligned} \right.
つまり、二次関数の比例係数と交点のx座標を用いて、直線の式の傾きを表すことができるのです。
なぜこのような関係が成り立つのかは、実際に計算してみれば分かります。よい練習になるので自分で導出してみてくださいね。
この関係はとてもよく使うので、ポイントにしておきます。
二次関数と交わる直線の式は、x座標と二次関数の比例係数で表せる!
今回の宿題
- 中学2年の単元「一次関数」などから、グラフの問題15問以上
を、今回の説明を意識して解いてみてください。
学校で配られた問題集でも、ネット上の問題でも大丈夫です。