2020年度都立国立高校の入試で出題された数学の解説をします。今回は大問3,4の解説です。
大問1,2の解説はこちらです。
大問3は結構骨のある問題だったと思います。特に証明の形式が少し特殊だったので、本番びっくりしてしまった受験生も多かったのではないでしょうか。
大問4は、設定さえきちんと読み解けば決して難しい問題ではありませんでした。立体にしては計算が複雑ではなく、大問2,3,4の中だとこの大問が一番点に繋がりやすいと思います。ただ立体が嫌いな受験生は多いですから、この程度でも十分差がつくということなのかなと思います。
今回初出のポイントはこちらです。
円の半径は二等辺三角形と相性よし!
大問3
下の図 1 において,△ABC は, ∠BAC が鈍角で,AB = AC の二等辺三角形である。辺 AB,BC,CA の中点をそれぞれ L,M,N とする。点 P は線分 CN 上にある点で,頂点 C と点 N のいずれにも一致しない。点 Q は線分 AB を直径とする円と直線 PM との交点のうちM と異なる点である。次の各問に答えよ。

〔問 1〕右の図 2 は,図 1 において,点 M と点 L,点 L と点 Q をそれぞれ結んだ場合を表している。∠MLQ = 96°のとき,∠APM の大きさは何度か。

〔問 2〕右の図 3 は,図 1 において,直線 PQ と直線 AB の交点を R とし,点 L と点 Q,点 M と点 N をそれぞれ結んだ場合を表している。次の ⑴,⑵ に答えよ。

(1) ∠PMC = ∠PMN であるとき,△CPM ∽ △LQRであることを次のように証明した。点線に囲まれた部分では,∠PCM = ∠QLR を示している。点線に囲まれた部分に当てはまる証明の続きを解答欄に書き,この証明を完成させなさい。

(2) 図 3 において,CP = PN,∠BAC = 120°,AB = 8 cm であるとき,線分 PR は何 cm か。
問1
問1で求められていたのは、線分ACとLMが平行であることです。的確に情報を整理していけば、これに気づくのは難しいことではありません。
たとえば、点Mが辺BCの、点Lが辺ABの中点であることに気をつければ、中点連結定理よりAC // LMを得られます。ちなみに中線連結定理を使うことは、このあとの問2を見てから気づく人も結構いるでしょうね。
また、別の方向から平行を求めることもできます。ここでこんなポイントを紹介してみるとしましょう。
円の半径は二等辺三角形と相性よし!
円の中心から円周にのばした線分の長さ、つまり半径はどれも同じです。よって半径を二辺とする三角形は簡単に二等辺三角形になります。これを使わせる問題は結構多いので、ここでポイントとしておきますね。
そして実際、今回の問題にも二等辺三角形MLBが含まれたおり、これは条件(AB=AC)として与えられている二等辺三角形CABと底角を共有しています。よって2つの二等辺三角形が相似であり、AC // LMであることに気づくのは容易でしょう。
いずれのやり方にせよ、以上のようにAC // LMにさえ気づけば同位角より∠APM=∠LMQ。二等辺三角形LMQの頂角が今回96°と与えられているので、底角である∠LMQ=42°と分かり、∠APM=42°が得られます。
問2
(1)
今回の証明は前半部分が既に示されているという珍しいパターンです。こういう特殊な設問は、何か出題者の意図があることを勘ぐってしまいますが…MN // ABをヒントとして出したかったということなのでしょうか?まあ真意は出題者のみぞ知る、ですね。
さらに今回は∠PMC=∠aと与えられています。これももう結構なヒントですね。要するに、この角を基準にして話を進めろよ、ってことです。
さて、問題設定への勘ぐりはここまでにしておいて、真面目に問題を解き始めるとしましょう。今回の主役である∠PCMと∠QLRのうち、∠QLRの方は中心角となっています。中心角と円周角は行ったり来たりできるように、というポイントがありましたから、∠BMR=\frac{1}{2}∠QLRが成り立っていると言うことにまず目を向けます。今回は∠PMC=∠aと与えられていますからこれを使うと、対頂角より∠BMR=∠PMC=∠aなので、∠QLR=2∠aとなります。
というわけで目標は、∠PCM=2∠aを示すことになりました。二等辺三角形の底角より∠PCM=∠ABMなので、∠ABM=2∠aを示しても良いですね。ここで∠ABMは三角形MBRの外角であることに注意しましょう。外角公式より∠ABM=∠BMR+∠MRBです。∠BMR=∠aであることはさっき見たので、∠MRB=∠aとなってほしいところですが…さっきの勘ぐりで出てきたMN // ABをヒントにすれば、確かに同位角より∠MRB=∠PMN=∠PMC=∠aが成り立っています!以上より、∠PCM=2∠aも言えますね。
以上のことを証明としてきれいにまとめれば、∠PCM=∠QLRが示せます。
(2)
(1)で相似の証明をしたのでそれを利用するのかな?と思いますが、よくよく考えたら(2)では∠PMN=∠PMCとは限らないので、(1)の内容はあまり使えなさそうです。
とりあえず問題文の120°という数字から、特別角の三角形を思い出します。ここで注意して欲しいのは、120°を2つに60°を作るというのもありますが、120°の外角として60°が隠れているということです。これを踏まえて以下のように特別角の三角形ができるような補助線を引くと…PRは斜めの線として、三平方の定理で求めることができそうです。
三平方の定理を使うために、各辺の長さを求めていきます。以下cmは省略します。
- CP=PN, AB=8より、PN=2, NA=4, AB=8
- △CABに対する中点連結定理より、NM=4
- △PNM∽△PARの相似比は1:3ゆえ、AR=12
- 特別角の三角形の三辺の比より、AH=3, PH=3\sqrt{3}
以上より、以下の図のようになります。
よって、PR=\sqrt{(3\sqrt{3})^2+15^2}=6\sqrt{7}です。
大問4
下の図 1 に示した立体 ABCDーEFGH は, 1 辺の長さが 2 cm の立方体である。立方体 ABCD―EFGH において,線分 AE を A の方向に伸ばした直線上にあり,AE = AO となる点を O とする。点 P は,頂点 A を出発し,正方形 ABCD の辺上を頂点 A,B,C,D,A,B,C,…の順に通り,毎秒 1 cm の速さで動く点である。点 Q は,点 P が頂点 A を出発するのと同時に頂点 H を出発し,正方形 EFGH の辺上を頂点 H,E,F,G,H,E,F,…の順に通り,毎秒 2 cm の速さで動く点である。点 O と点 P,点 P と点 Q,点 Q と点 O をそれぞれ結ぶ。点 P が頂点 A を出発してからの時間を t 秒とする。

例えば,図 2 は図 1 において,t = 1 のときの点 P,点 Q の位置を表している。次の各問に答えよ。

〔問 1〕 t は 7 以下の自然数とする。直線 PQ が直線 OE とねじれの位置にあるときの t の値をすべて求めよ。
〔問 2〕 円周率を \pi とする。t = 2 のとき,△OPQ を直線 OE を軸として 1 回転させてできる立体の体積は何 cm^2 か。ただし,答えだけではなく,答えを求める過程が分かるように,図や途中の式などもかけ。
〔問 3〕t = 4 のとき,点 O,点 P,点 Q,点 F の 4 点を頂点とする立体 OPQF と立方体ABCDーEFGHが重なる部分の体積を Vcm^3,立方体 ABCD―EFGH の体積を Wcm^3 とする。V は W の何倍か。
問1
ねじれの位置の定義に当てはめるだけなので省略します。
問2
ほぼ回転体の基本問題ですね。全然難しくないので、実際の試験では見た目に惑わされて敬遠することなく、きちんと取り組むことが求められたはずです。
t=2のとき、点Pは点Bに、点Qは点Fと一致します。よって点O,P,Qは全て正方形ABFEと同じ平面上にあり、図を描くと以下のようになります。
従って、以下のようにS,T,Uと名前を付ければ…
- 三角形OABをOEを軸に回転させたもの、つまり底面が半径ABの円で高さがOAの円錐S
- 正方形ABFEをOEを軸に回転させたもの、つまり底面が半径EFの円で高さがAEの円柱T
- 三角形OFEをOEを軸に回転させたもの、つまり底面が半径EFの円で高さがOEの円柱U
求める図形の体積は、SとTの体積の和からUを除いたものです。
従って\frac{16}{3}\pi cm^3が答えです。
問3
問3も、立体の様子さえきちんと整理できれば…という感じです。
t=3のとき、点Pは辺BCの中点、点Qは点Gと一致します。点Sと点Rをそれぞれ、辺ABと辺OFの交点、辺OGと面ABCDの交点とすると、以下のような図となります。
太線で囲まれた部分がVです。ここで点Sは辺ABぼ中点、点Rは対角線ACの中点となります。(中線連結定理を△OEFと△OEGに使ってみれば明らかですね)
Vはこのまま体積を出せるような単純な形ではないので、分割をしましょう。点RとFを結んで、Vを三角錐F-PRSと三角錐R-PFGに分割します。
このまま具体的にそれぞれの三角錐の体積を計算しても良いですが…今回はWに対する比さえ出せれば良いので、比だけ求めることにしましょう。
- 三角錐F-PRSをWと比較すると、底面の△PRSはWの底面の8分の1、高さは同じ。錐であることに注意すると、体積は\frac{1}{8}\times 1\times \frac{1}{3}=\frac{1}{24}より、Wの24分の1。
- 三角錐R-PFGをWと比較すると、底面の△PFGはWの底面の2分の1、高さRPはWの2分の1。錐であることに注意すると、体積は\frac{1}{2}\times \frac{1}{2}\times \frac{1}{3}=\frac{1}{12}より、Wの12分の1。
これらを合わせて、VはWの\frac{1}{8}です。
比で問われているときは、たとえ具体的に計算できる状況であっても比でなんとかした方が計算が少なくてすむので覚えておくと良いです。もちろん、比でどうやるのかわからなければ具体的にごりごり計算しましょう。