2020年度都立立川高校の入試で出題された数学の解説をします。今回は大問1,2の解説です。
大問3,4はこちら。
大問1では解と係数の問題が問3で出てきました。解と係数の関係を使わなくても解けますが、知っていれば早いですからこれを機に定着させておきましょう。
大問2のポイントは等積変形でした。問1、問2は簡単だったものの、問3で少し引っかけてくる問題が出てきました。細かい問題設定の違いに気づき、適切に対処することが求められたと思います。
大問1
問1,2,4は簡単なので省略します。
問3
xについての2次方程式x^2+24x+p=0を解くと,1つの解はもう1つの解の3倍となった。p の値を求めよ。
まず「1つの解はもう1つの解の3倍」というのを表現しなければいけませんね。1つの解、というのがなんなのか分かりませんからこれを\alphaと置きましょう。すると二次方程式の解は\alpha , 3\alphaと表すことができます。
いま、未知数はpと\alphaの2つです。よって式を2つ立てれば良いわけですが…二次方程式の解を用いて式を立てると言えば、解と係数の関係でした。これを使うと、
\left\{ \begin{aligned} \alpha+3\alpha&=-24\\ \alpha\times3\alpha&=p \end{aligned} \right.
となります。1式目から\alpha=-6となり、これを2式目に代入してp=108と分かります。
問5
下の図のように,線分 AB を直径とする半円がある。解答欄に示した図をもとにして,\stackrel{\frown}{AB} 上に\stackrel{\frown}{AC}:\stackrel{\frown}{CB}= 5:1 となる点 C を,定規とコンパスを用いて作図によって求め,点 C の位置を示す文字 C も書け。ただし,作図に用いた線は消さないでおくこと。

作図自体はシンプルで、弧の比が5:1になればいいわけです。ここでポイント「円周角・中心角・弧の長さは互いに行ったり来たりできるように!」を思い出しましょう。これを使えば、\stackrel{\frown}{AC}:\stackrel{\frown}{CB}= 5:1より、円の中心をOとして∠AOC:∠BOC=5:1、つまり∠BOC=30°となるように作図すれば良いと気づきます。
30°と言えば1:2:√3の特別角の三角形であり、それは2つ重ねれば正三角形になります。よって正三角形を作ってから、角の二等分線で30°を作れば良いですね。従って作図の手順は、
- ABの中点Oを作図し、
- OBを1辺とする正三角形を作図し、
- 角Oの二等分線を引く。
となります。

大問2
下の図 1 で,点 O は原点,曲線ℓはy=ax^2(a < 0),曲線 m は y=\frac{36}{x}(x < 0)のグラフを表している。曲線ℓと曲線 m との交点を A とする。次の各問に答えよ。

〔問 1〕点 A の x 座標が -3 のとき,a の値を求めよ。
〔問 2〕下の図 2 は,図 1 において,点 A の x 座標を -4,y 軸を対称の軸として点 A と線対称な点をB,y 軸上にある点を C とし,点 O と点 A,点 O と点 B,点 A と点 C,点 B と点 C をそれぞれ結んだ四角形 OACB がひし形となる場合を表している。2 点 B,C を通る直線と曲線ℓとの交点のうち,点 B と異なる点を D とした場合を考える。点 D の座標を求めよ。ただし,答えだけでなく,答えを求める過程が分かるように,途中の式や計算なども書け。

〔問 3〕下の図 3 は,図 1 において点 A の x 座標とy 座標が等しいとき,曲線 m 上にあり,x 座標が -12 である点を E,曲線ℓ上にあり,2 点 A,E を通る直線 AE 上にはなく,点 O にも一致しない点をP とし,点 O と点 A,点 O と点 E,点 A と点 E,点 A と点 P,点 E と点 P をそれぞれ結んだ場合を表している。△OAE の面積と△AEP の面積が等しくなるときの点 P の x 座標を全て求めよ。

問1は簡単なので省略します。
問2
欲しいものは点Dの座標です。これを得るために必要なものを逆算して考えていきましょう。
点Dは直線BCと曲線ℓの交点です。交点の座標を出すのに必要なのは、それぞれのグラフの式ですね。
直線BCの式を出すには点Bと点Cの座標があれば良いです。そしてそれらは点Aの座標さえ分かれば求められそうですね。
曲線ℓの式を求める、つまりaの値を求めるには二次関数が通る点が1つ分かれば十分ですから、これもまた点Aが分かれば十分でしょう。
と、ここまで考えれば解答までの道筋が見えますね。では実際に解いていきましょう。
まず関数mの式から点Aの座標を求めると、A(-4,-9)となります。曲線ℓはこの点Aを通るので、曲線ℓの式はy=-\frac{9}{16}x^2です。
点Aの座標より、点B(4,-9)となります。点Cはひし形AOBCの頂点ですから、点C(0,18)です。ここまで来れば変化の割合と定点公式より、y=\frac{9}{4}x-18となります。
ここまで来ればあとはy=-\frac{9}{16}x^2とy=\frac{9}{4}x-18を連立するだけです。この連立方程式を解くと、x=-8,4です。x=4は点Bのことを示しているので、点DはD(-8,-36)であると分かります。
問3
一辺を共有する面積の等しい三角形は、等積変形を使え!というポイントがあったとおり、これは完全に等積変形の問題です。
等積変形をするなら、まず底辺の傾き(今回はAE)が分からなければいけませんから、点A,Eの座標をまず求めにいきます。
点Eは問題文よりE(-12,-3)ですね。点Aは「x 座標とy 座標が等しい」とありますから、点A(p,p)と置いて、これがy=\frac{36}{x}(x < 0)にあることを考えましょう。すると、
\begin{aligned} p&=\frac{36}{p}\\ \therefore \ p^2&=36\\ \therefore \ p&=-6\ (<0) \end{aligned}
となって、A(-6,-6)となります。よってAEの傾きは変化の割合より-\frac{1}{2}です。
また問1,問2のように点Aを使って曲線ℓの式を求めると、y=-\frac{1}{6}x^2です。あとはこの曲線ℓと、AEと同じ傾きで点Oを通る直線(つまりy=-\frac{1}{2}x)の交点を求めれば…おしまい、ではないんです。
問題文で赤線を引いたところを見てください。今回、点Pが動く範囲はふつうの等積変形の問題より広く設定されています。したがって、直線AEに対して点Pが点Oと同じ側にない場合、と言うのも考えなければいけません。つまり以下のような場合のことです。
というわけで結局、今回点Pの場所としてありうるのは、
- 直線AEと平行で点Oを通る直線sと、曲線ℓの交点
- 「直線AEと平行で直線AEより下側にあり、直線AEとの距離が、直線AEとsの距離と同じ直線t」と、曲線ℓの交点
です。それぞれの直線にs, tと名前を付けてあります。
直線tの式は、この場合と同じように考えればよいです。直線AEの式がy=-\frac{1}{2}x-9であり、切片と点Oとの距離は9ですね。よってその二倍を考えてy=-\frac{1}{2}x-18が直線tの式となります。
従って、y=-\frac{1}{6}x^2とy=-\frac{1}{2}x、y=-\frac{1}{6}x^2とy=-\frac{1}{2}x-18をそれぞれ連立すれば、答えはx=-9,3,12であると分かります。